投稿日:2018年2月19日

TOMODACHI 東北グラスルーツ・リーダーシップ
アカデミー supported by J.P. モルガン 2018 in LA

特定非営利活動法人ウィメンズアイは、2015年2月にスタートしたグラスルーツ(草の根)・アカデミー東北事業の一環として、初の米国ロサンゼルス研修を行いました。
東北のために活躍している、次世代をリードする女性たちが、事業継続の知識を高め、ますます地域での影響力を持てるよう、スキルアップすることを目的にしています。
この研修は、J.P.モルガンに協賛いただき、TOMODACHI イニシアチブを通じて実現しました。

2018年2月4日から11日まで、グラスルーツ・アカデミー東北メンバーのうち、選抜を経た若手女性たち10名がロサンゼルス研修に参加しました。
ぎっしりつまった学びの日々のレポートを速報でお届けします。開催に際してのプレスリリースはこちらをご覧下さい。

 

ロサンゼルス 1日目

 グラスルーツ・アカデミー東北は、2月4日より、ロサンゼルス研修が始まりました。
 岩手、宮城、福島から選抜された10名が、米国ロサンゼルス市のダウンタウン、リトルトーキョーに集まりました。日本から到着してすぐ、ウェルカムランチで出迎えられました。主催は今回の重要なパートナーである米日カウンシル・南カリフォルニア支部です。ゲストは米日カウンシルのメンバーのほか、日本国総領事館や、今回のもう一つのパートナーであるルーシー・ジョーンズ科学社会センターからお越しになり、総勢21名の方々と交流を楽しみました。
 米日カウンシル副会長のデニス・スギノさん、日本領事の菊間茂さんのご挨拶を受け、アカデミー参加者からは2名が自分の活動を紹介するスピーチに挑みました。東京から宮城県石巻市へ移住したカメラマンの古里裕美さんは、ご自身が撮った震災のご遺族の写真を見せながらのスピーチで、多くの方の心を動かしました。岩手県宮古市出身で子ども向けの防災活動をしている佐々木真琴さんは、「ちちんぷいぷい」という紙芝居を実演、ゲスト全員でジェスチャーしたり、呪文を唱えたり、など、大爆笑の反応になりました。
 その後はこの研修最初のセッション。デヴィッド・ブーンさんとサワコ・ガードナーさんから、日本国外で人生を切り開いた二人の女性のライフヒストリーを聞き、レジリエンスとリーダーシップの面で自分の人生にも照らし合わせて考える時間となりました。ブーンさんは米日カウンシルのツアーで震災後の東北へも訪問されたことがあり、女性がイノベーションを起こしている、ということをご覧になったそうです。戦後の国際間を生き抜いた女性のストーリーは、震災をくぐり抜けて活動している東北の女性たちに力を与えてくれました。
米日カウンシル

 

 

 

 

ロサンゼルス 2日目

 2日目の2月5日は、朝から晩までびっしり予定が詰まっています。午前1つ、午後2つ、夜に1つのプログラムでした。ロサンゼルスで日系アメリカ人のコミュニティとなっているリトル・トーキョーで、日系人の歴史や文化から学ぶ一日でした。

 

『リーダーシップとレジリエンス』

 前日にお話を伺ったデヴィッド・ブーンさんの講義。30年の海軍での経験と、その後の大企業のマネージメントから、人生を包括するリーダーシップと困難に立ち向かうしなやかさ(レジリエンス)について、学びました。人をひきいるリーダーシップという狭い概念ではなく、自分自身の人生を「自分で責任を持って(コミットして)」生きるための取り組み方、ともいえるフレームワークを使って、参加者それぞれが、自分の生き方を整理しました。人との建設的な関係性をつくるためのコミュニケーション方法も練習。東北の現場でそれをどう活用するかが今後の課題です。
この日にお借りした会場は、《Go For Broke》という博物館で、第二次世界大戦時の日系アメリカ人部隊を伝える施設。日本にいるとほとんど学ぶことのない日系人の苦難の歴史についても学ぶことができました。

 

 

『米日文化会館』

 ここは日系アメリカ人が運営する施設で、元は日本の文化を伝える拠点として建てられましたが、現在では広く多様な文化のために開かれています。芸術という分野からの相互理解やつながりをつくる重要な発信地として、役目をはたしています。CEOのレスリー・イトウさんからご案内をいただきました。日本庭園に流れる川の段差は世代を表し、流れのはやい一番上(源流)が1世、次が2世、世代を追うごとにだんだんと流れが緩やかになる、その説明を聞いたある参加者からは「あとの世代が楽になるなら今辛くてもやる気になる」と感想が漏れました。規模の大きな団体で芸術という一見、アカデミーの活動分野とは縁がなさそうに見えましたが、「規模の大きさは価値ではない」「異なる業種との連携が新しい価値を生む」といった、示唆に富むヒントをいただきました。
http://www.jaccc.org/

 

 

『KIZUNA』

 最後のセッションは、子どもから大人まで、日系人の文化や価値観を伝える教育活動に携わるNPO KIZUNAを訪問しました。創立者のクレイグ・イシイさんが、団体の設立目的やミッション、これまでの8年の活動についてをプレゼン。ウィメンズアイとアカデミーの意義に深く共感してくださっているクレイグさんから熱いパッションが伝わっただけでなく、参加者の多くに共通するNPOの運営の秘訣を学ぶことができました。短い時間がもどかしいほどの、濃密な一時間弱でした。
http://www.gokizuna.org/

 

 

『ホストディナー』

 夜は、米日カウンシルの有志がディナーにご招待してくだり、深い交流の時間となりました。ウェルカムパーティと共にこの会をコーディネートしてくださったローレン・オーハタさんが、参加者一人一人のプロフィールに興味を持つ方をアレンジしてくださったおかげで、どのテーブルも単なる活動の紹介にとどまらず、価値観やビジョン、共通した課題の発見など、大変有意義な夕食の時間となりました。ホストしてくださった皆様に深く感謝します。

 

 

ロサンゼルス 3日目

 2月6日は朝からロサンゼルス市役所、市議会の訪問、午後は地域づくりに取り組むメルカド・ラ・パロマで女性地域リーダーたちとディスカッション、夕方はロサンゼルスで活躍している女性リーダーとのパネル・ディスカッションに参加しました。

 

『ロサンゼルス市役所』

 レジリエンスオフィサーのマリッサ・アホさんと新任の国際担当副市長のニナ・ハチギャンさんと面談。同席されていた同じ部署のお二人もすべて女性です。副市長のニナさんから、今、ロサンゼルスも災害に備える取り組みに力を入れており、まもなく、市の新しい防災計画が発表されることが説明されました。そこでも、コミュニティ、隣人同士で助け合える仕組みを作りたい、それを実現するために様々な連携が必要であることをお聞きしました。アカデミーからはふたりがスピーチ。宮城県南三陸町の阿部成子さんからは自身の被災体験を、いわて連携復興センターの瀬川加織さんからは普段からの業種間を超えた連携が次の備えに重要であることを伝えていただきました。
 その後、ちょうど開催中だった市議会を見学。だれでも見学ができ、事前に登録すれば自由に2分間の発言ができるという開かれた議会に、全員が驚きました。ここで、ミッチェル・イングランダー市議よりTOMODACHI東北グラスルーツ・リーダーシップ・アカデミーをご紹介いただきました。

 

 

 

『メルカド・ラ・パロマ』

 ダウンタウンより少し西側の移民が多く住む地区に、生活困窮者の支援をしているカーサ・エスペランサ(希望の家)という団体があります。メルカド・ラ・パロマはその取り組みの一つで、初めてのビジネスにチャレンジする場として、古い工場を買い取って作り変えた場所です。現在では13のレストラン、ショップなどが入っています。
 ヘルスプログラムのディレクターであるノルマ・ベンティスさんより、活動を紹介して頂きました。低所得者への住宅供給から始まったこの団体は、今では地域のソーシャルワーカー的なコミュニティリーダーである〈プロモーター〉を育成する事業を行っています。メルカド・ラ・パロマでランチをそれぞれ楽しんだあと、そのプロモーターの女性たちとの対話の時間が設けられました。日本では同様の役割としては、民生委員が近いかもしれませんが、これは民間での取り組みで、地域のお世話をする任意の資格です。言葉や文化が異なり、仕事も住む場所にも困窮していた女性たちが、このトレーニングを受けて人生が変わり、今では自分と同じように困っている住民のための支援者になっている、というお話を聞かせていただきました。
http://www.mercadolapaloma.com/

 

 

『パネル・ディスカッション』

 様々な分野でレジリエンスや女性のエンパワメントに関わる3名の女性リーダーと、アカデミー参加者の1名からプレゼンテーションを聞きました。最初に、モデレーター役のナンシー・コーエンさん(政治学者)からの導入で、アメリカでもほんの40年前は女性がクレジットカードも銀行口座も作れなかったし、今でもまだ発展途上の課題があることを伺いました。その後アカデミーからは岩手県花巻市で産後ケアの活動をしている佐藤美代子さんから、被災後の妊産婦ケアから始まり、今では岩手県で初めての産後ケアサービスへと発展している、まんまるママいわての紹介。続けて3名から、短い時間ながらも大変興味深い発表をいただきました。レジリエンスを高めるとは建築物ではなく、つながりやコミュニティを作ること、人生や生活に参画するといったソフト面での活動であること。民主的な社会は全員の声が聞こえてきて、全員のために反映されていることが重要であること。女性の投資は多くが子どもや地域に還元されるという研究を受け、女性が女性に投資するKIVAという仕組みを運営していること。そして、「東北のみなさんは、草の根の活動から世界を変えている、米国もそこから学べる」、とエールをいただきました。

 

 

 

ロサンゼルス 4日目

 2月7日、水曜日、LAダウンタウン最後の日。コミュニティ支援の実践の場を学んだ日でした。

『ハリウッドでの地域づくり、コミュニティ支援視察』

 ハリウッドといえば華やかなイメージがありますが、実際は路上生活者や生活困窮者が多く暮らす、課題の多い地域です。この地域で長年、支援に取り組んでいるハリウッド・プロパティ・オーナーズ・アライアンスを訪問しました。創設者のケリー・モリソンさんは、この地の課題解決に着手した時に、すでにある支援団体それぞれが、自分の枠の中で活動していてまったく連携していないことに気づきました。そこで、各団体の代表が定期的に集まって、支援対象者、活動内容、得意分野などの情報を集め、リストを作ります。そうすることで、地域中の団体がその情報を使うことができ、強みを生かしながら効率よく支援ができるようになったそうです。
 その後、同団体のアンジェラ・バブコックさんに案内してもらいながらハリウッドの町を歩いて、ハリウッドYMCAへ。館長のオードリーさんから、歴史あるハリウッドのYMCAでも、毎年、地域の企業に資金調達に奔走していること。またそのために、何が自分の組織や活動の価値なのかを、相手のわかる言葉で伝え、心を動かすことが重要であると教えてくださいました。

 

 

 

『ニュースキャスター デヴィッド・オノさんとの対話』

 カリフォルニアのローカルテレビ局KABCを訪問し、日系アメリカ人で報道番組のメインキャスターであるデヴィッド・オノさんとお会いしました。オノさんは米日カウンシルの今年の代表団として来月日本を訪れ、政府関係者、実業界、学術界などのリーダーと交流するご予定です。東日本大震災後、たびたび東北を取材され、カリフォルニアで伝え続けてくださっています。昨年も陸前高田、大船渡、気仙沼を訪問されたそうで、その時のニュース映像を見せていただきました。ロサンゼルスは全米で最も日系人が多く住むため、日本の情報のニーズが高く、これからも、情報を発信し続けることが局の使命とのこと。アカデミーからは、宮城県の阿部成子さんと古里裕美さんがスピーチし、オノさんからは「僕はまた必ず、あなたたちのところを訪問します」と約束をいただきました。

 

 

『オクシデンタル大学 学生との交流会』

 ラテンアメリカの政治学を専門とするジェニファー・ピスコポ准教授が機会を提供してくださり、学生との意見交換の場が持たれました。アカデミーからは、宮城県気仙沼市で子どもたちを対象に海の体験活動をしている笠原寛子さんと、福島県二本松市で有機農業と体験ツアーをおこなう、きぼうのたねカンパニーの菅野瑞穂さんの2名から発表。質疑応答の後、2名の学生からの活動発表をお聞きしました。お一人目のエレンさんは災害政治学を学んでいて、ニューオリンズでのハリケーンカトリーナ発生後にコミュニティがどう変化しているかを調査した体験談。二人目のブローディさんはご自身がユダヤ人で、アルティメット・フリスビーを通してアラブ人とユダヤ人の交流を深める活動を、紹介してくれました。

 

 

『ルーシー・ジョーンズ博士ホームパーティ』

 今回のプログラムのパートナーの一つであるルーシー・ジョーンズ博士のご自宅に招かれました。カリフォルニア技術大学の研究者やルーシー・ジョーンズ・センターの方々とリラックスした交流の時間です。アカデミーから、岩手県陸前高田で子育て中のママをサポートする活動をしている板林恵さんが、ご自身の被災体験を語りました。専門家の皆さんだけに関心が高く、たくさんの質問をいただきました。実際に日本で地震が起きた時にどうやって住民が情報を知るのか、津波が来るかもしれないから高いところへ逃げたのは、何をもとに判断したのか、など、研究からは知りえないリアルな回答をお伝えすることができました。

 

ロサンゼルス 5日目

LA研修も中盤を過ぎた2月8日は事業を起こし、継続するための勉強の日でした。

『NPO戦略的計画と継続性』

 20年間移民問題を支援するNPOで働いていて、その後NPOのコンサルタントをされているデボラ・チンさんに、みっちりとワークショップをしていただきました。そもそも、組織とは、その組織を効果的に使うには、そのための戦略計画とは、5年後には何を成し遂げていたいか、などなど、本来なら3日くらいかかる内容を、ギュッと圧縮。自分のミッション、それに近づけるための目標、それを達成するための具体的な近い目標、をそれぞれ考え、ペアでシェアしあいました。10名の参加者は学生からすでにNPOを立ち上げた人まで経験が様々で、初めてこんなことを問われて戸惑う人、何度も考えたことがあることを再確認する人などなど。頭の中がパンクしそうなセッションでした。

 

 

 

『セルフケアについて』

 ロサンゼルスの西本願寺の僧侶をされている若い女性のサラ・セキヤ先生にお越しいただきました。東日本大震災の経験をきっかけに、一般企業から仏教の道へ転身されたという奇抜なご経歴を持ち、2015年からシアトル、昨年からロサンゼルスに移られました。草の根の活動を続けていると、必ず心が困難にぶつかることがあります。その時に立ち戻れるための自分の中の核を持っておくことを、伝えてくださいました。事業を継続するために、心の健康を保つことは非常に重要です。そのための、小さなヒントになるセッションでした。

 

 

ロサンゼルス 6日目

あと残り2日となった、2月9日は、このグラスルーツ・アカデミーのルーツともなった、先輩女性リーダーのライフヒストリーから学ぶ、という重要なセッションでした。

『草の根からグローバルリーダーへ』

 ディズニー社のグローバル危機管理長で、ロサンゼルス赤十字の理事長でもある、アンドレア・デイビスさんから、人生をどう切り開いていったかを伺いました。
 アンドレアさんは、17歳でシングルマザーになり、ウェイトレスとして夜働きながら日中は大学へ行き、夕方子どもを迎えに行って寝かしつけ、また働きに出る、という2年間を過ごし、弁護士事務所で働き始めます。その後、2000年問題に対処するための行政スタッフに応募し、そこから災害コーディネーターのキャリアが始まりました。2005年にニューオリンズで起こったハリケーン・カトリーナで大きな成果を上げ、その後、現職であるディズニーより、声がかかったそうです。
 圧巻だったのは、ニューオリンズでの仕事をゲットするまでのチャレンジです。その職は、米国連邦緊急事態管理庁という政府の組織でしたが、アンドレアさんはこの職に15回も応募し、毎回サンフランシスコからニューオリンズまで片道3600kmを車で移動して面談を受けては断られ、その次の16回目でようやく合格できたとのこと。質疑応答では、「若い母親という立場での困難は?」「なぜそんなに諦めずに挑戦し続けられるのか?」「そのキャリアはどうやって見つけたのか?」など、多くの質問が飛び交いました。東北で活動する女性たちに共通する部分がこんなにもたくさんあるのか、という驚きと、この一週間いろいろなところで学んできたこととも共通することがある発見がありました。

 

 

 

『イベント 女性の視点の防災』

 午後は、アメリカ赤十字とルーシー・ジョーンズ・センター主催のイベントのため、オレンジ郡にある赤十字を訪れました。赤十字ほか、オレンジ郡近郊でレジリエンスに関わる方々が30名ほど集まり、東北での経験をシェアしました。
 アカデミーからは岩手県の板林恵さん、佐藤美代子さんが発表。小さな避難所や在宅避難者には物資が届きにくかったことや、“若い女性”が立ち上がったことへの障壁など、集まった皆さんも共感を持って聞いてくださいました。女性の進出が進んでいるというイメージがあるアメリカでも、実は日本と変わらず、女性へのハードルはたくさんあり、活躍している女性たちは自分自身の力でキャリアを切り開いているんだということを学びました。

 

 

ロサンゼルス 7日目

 とうとう最終日となりました。長いと思った1週間でしたが、過ぎてしまえばアッという間でした。締めくくりとして、おふたりの女性パイオニアから、これまでの学びを集約するようなお話を伺いました。お一人はまさに時代の最先端の事業を起こしている方、もうお一人は福祉の分野であらゆる状況において困窮している方々を40年近くサポートされてきた方です。

 

 

『Dude I Need A Truck』

 海外では広く普及し、気軽に活用されているUber(ウーバー)という仕組みがあります。移動したくても車がない時に、Uber社に登録した人が車を出してくれる、というカーシェアリングのアプリケーションです。“Dude I Need A Truck”は、同様のサービスを、トラックに応用したもので、日本語で言えば「あぁートラックがいるじゃん!」という意味。例えば家具などの大きなものを買った時などに、このアプリを通じてトラックを持っている登録者に運びに来てもらえる、という仕組みです。
 若手女性起業家のソニア・リーさんは、もともとグラフィックデザイナーで、これまでも自分の会社を起こしたり、企業に雇用されたりと両方の経験をしたことから、自分で自分の仕事環境を選ぶことを最重要視しています。成果物には自分自身が反映される、だから満足する成果物をつくるには、満足できる環境を整えておかなければならない。自分自身が我慢する環境ではいい成果物にはならない、そのためにも、自分自身のケアが大事。自分の内側の声をよく聞くこと。挑戦すれば必ず失敗することがある、でもそれは成長につながるから、失敗するなら速く失敗して早く次に進むこと。などなど、心に刺さるエッセンスがたくさん詰まったお話でした。

 

 

『ソーシャルワーカーとしての人生』

 ロサンゼルスのリトル・トーキョーに40年近く活動している社会福祉施設のリトル・トーキョー・サービス・センターがあります。ここは元々、20世紀初頭に日本から渡り、高齢者となった日系一世のためのサービスセンターとして開設されました。今では100名以上のスタッフを抱え、日系人だけでなく、人種、年齢層、住民・旅行者などの垣根を超えて広くサービスを提供しているセンターですが、1980年の立ち上げ時はたった3名、一つの机と椅子二つ、電話一本からスタートしました。この創立者のお一人で、今はソーシャルワークのコンサルタントをされている坂本安子さんにライフヒストリーをお話いただきました。
 福島県いわき市出身の坂本さんは1976年に渡米、日本で勉強していたケースワーカーとして職を探し、UCLAで猛勉強をして修士の資格を取り、手探りで支援サービスを開拓してこられました。支援のために自分が貢献できるよう、自分がステップアップ(勉強)すること、よいボランティア(サポーター)を育てること、資金集めのためには活動の価値を理解してもらえるよう伝え、信頼関係を築くこと、受けた恩を次へ返すこと、支援対象者の文化や価値観を尊重すること、など、社会起業家に必要なことだけでなく、日本人だからこその精神性の重要性も教えていただきました。2年前にリトル・トーキョー・サービス・センターを退職されたものの、現在はそのご経験を乞われ、優秀なソーシャルワーカーを育てるための「さかもと塾」を開き、次の世代を育てることに注力されています。
一日の最後は、この研修でそれぞれが経験したこと、発見したこと、帰国してからにつなげることをふりかえり、ディスカッション、学んだことを自分自身に定着させる時間で締めくくりました。

 

 

 

 多様なセッションに加え、世代を交えた参加者同士の刺激からも、非常に多くのことを得られた一週間でした。約一年前から共に準備し、サポートをくださった米日カウンシル南カリフォルニア支部の皆様、ルーシー・ジョーンズ・センターの皆様、そして何より、この機会を支援してくださったTOMODACHIイニシアチブとJ.P.モルガン様に深く御礼を申し上げます。