津波被災地で目の当たりにしたのは、つながりを生み出す場の大切さでした。
震災前には、公民館や集会所や商店のように人びとが集い出会う、開かれた場がありました。
津波によって場が失われ、住まいも広い地域に分散した結果、
「震災後、みんなバラバラになってしまった」という声をたくさん聞きました。
つらい体験、被災後の境遇の違いが心に断絶を生み、三陸沿岸の被災地には話がしにくい空気がありました。
町が復興する過渡期、場所を整えるよりも先に、人をつなぎなおすことが優先だと私たちは考えました。
出会いや再会の機会から集いが始まり、その輪が幾重にもつながり、信頼の絆を結んでいく。
そのことが、孤立を防ぎ、日常のなかにセーフティネットをつくるのです。
趣味、関心、課題など、参加者がテーマで集い、知り合う。
それが、第一歩です。
そのためには参加しやすい、参加したくなる、楽しさのある集まりを作ることが重要です。
2011年9月に南三陸町の仮設住宅集会所からスタートしたワークショップは3年で380回、のべ3,800人以上が参加しています(2014年12月時点)。こうした集まりから人のつながりが生まれ、小さなコミュニティが始まっています。WEの役目は、こうした集まりの種を育て、力づけていくことです。
なかには、地域の課題をテーマにまなび合い、小さなことからアクションしていくコミュニティも生まれています。
被災地でのこうした動きは、日本全体を覆ういわゆる「無縁社会」、孤立を生み出す社会のありようにも、解決の糸口を示していくことでしょう。
地域社会にしなやかさをもたらし、災害に強い社会へと高めていくことがいま求められているのです。
ふり返ると、東日本大震災直後の緊急支援期に「女性のまなざしは、くらしの課題、社会的な弱者に敏感」なことに気づいたことが私たちのはじまりでした。
避難所から、知らない人ばかりの仮設住宅に入居する人々に向けて、まずは女性たちが集まりやすい場づくりをし、一人ひとりのたくさんの声を聞きました。
また、自分の町の復興の役に立ちたいと考える女性たちにも数多く出会いました。
大事にしてきた「女性のまなざし」を団体名に冠し「ウィメンズアイ」(略称WE:ウィ)として2013年にNPO法人化。社会を変えていく風を被災地から女性たちと共におこしていく小さな決意を込めました。
ウィと呼んでください。
東日本大震災以降、「レジリエンス」という言葉がしばしばつかわれます。
復元力、回復力、強靱性……さまざまな日本語に訳されますが、ウィはそれを「しなやかさ」に非常に近いものであると考えています。
本物のレジリエンスは日常の中に存在し、みんなを包み込み広がりのあるものでなければ、非日常には力を発揮しません。
レジリエンスは人がつくり出すもの。
くらしに根ざした地域社会のレジリエンスを支える小さな役割の担い手が必要とされているのです。
ウィは「女性のまなざしをいかした、しなやかな社会」を実現すべく、小さな変革を女性たちとともに創り出していきます。