AEDAN Koji Kitchen
[訪問記05]AEDAN(叡伝) 麹キッチン

“自分のエネルギー”を込めて、“エネルギー”をお金としていただいて、それを交換して回している感じがしています

約10年前、3.11復興支援のファンドレイジングがきっかけで、身近な人に手作り味噌を販売。そこから、「叡智」と「伝統」という意味を込めてAEDAN(叡伝)という屋号を付け、発酵食品の製造・販売のビジネスを起こすべくゆっくり準備を進めてきた。経営理念は、「日本の叡知である発酵食品をアメリカに根付かせ、その価値を共有する」。2022年春、サンフランシスコ市内に念願の路面店「叡伝 麹キッチン」をオープンした摩利子グレディさんを訪ねた。

報告:矢野明日香

概要

日時 :2022/6/22.Wed. 12:30-13:45

場所 :AEDAN Koji Kitchen(613 York St, San Francisco)

内容

1:AEDANのお弁当でお昼ごはん

2:摩利子さんインタビュー

3:店内見学

4:報告者の感想

5:みんなの感想から

1:AEDANのお弁当でお昼ごはん

お店に到着後、AEDANの販売しているお弁当で昼食。お弁当は、お豆腐 or 鮭、お味噌汁 or 甘酒からセレクト。

お弁当は、できるだけ市販のものは加えず、全てAEDANのパントリーを使うことを鉄則にしている。大根もちにかかっているのは、ひよこ豆のみそだまり。その時その時にできたもの・あるもので、AEDANの世界を作っている。

2:摩利子さんインタビュー

Q アメリカに暮らす移住者としての幸せや苦労について

・東京を拠点にした劇団に所属し、海外でもパフォーマンスをしていた。たまたまサンフランシスコで公演があった時にパートナーに出会い、結婚。劇団の仕事を続けながら、日本とサンフランシスコを半分ずつ行き来する生活だった。サンフランシスコでは無職だったので、子育てに集中。3.11後、劇団は解散。

・日本に帰ったらいつも麹を抱えて帰ってきて、家族の為にお味噌をずっと作っていた。たまたま、娘の学校で「味噌作り教室」を開催することになった。醸造していた味噌が半年たってようやく食べられるようになった時、3.11が発生。復興支援の為に、学校でファンドレイズをしたり、自分のお味噌を販売したりして、自然な流れでこういう形になった。ビジネスをやろうという意識はなかった。

・ベイエリアはいろんな食文化が混ざっているので、味噌が認知されていて、味噌おにぎりも「美味しい」と食べてくれたことから、味噌を広げられる可能性を感じた。また、味噌は防災食品にもなるから「一家に一樽あってもいい」と強く思い、「味噌を広げたい!」と思った。

・自分で動いてお金を生み出すことが大事だと思い、毎週1回集まっていた日本人の母5〜6人グループの仲間に手作り味噌を販売し、ファンドレイズの元にした。その時に、日々の自分のエピソードを綴ったニュースレターを添えていた。ニュースレターが欲しいという声をいただいたりと、少しずつ輪が広がっていき、お味噌を広く販売できるようになった。最終的に350人の人にレターを配信した。

・広がっていくと、お味噌の販売には手続きが必要だということがわかった。

・2012年〜、女性移住者のフードビジネス支援をしている非営利組織「ラ・コッシーナ」のビジネスサポートを受けた(※ラ・コッシーナに関する詳細は、以下にも記載)。何をやって、何を販売したいのか、300もの質問に答えていきながら、ビジネスプランを作成。どうブランディングしていくかも教えてくれて、ボランティアの写真家・デザイナーに無料でロゴや名刺を作成してもらった。

・AEDANでは「月1回の味噌作りクラス」「味噌・麹の販売」「お弁当の販売」をしている。ラ・コッシーナの方に、プロダクトは1つか2つに絞った方がいいとアドバイスされたけれど、「麹のすごさを伝えるには味噌だけでは足りない!」と思い、ラインナップは壊さずにやってきた。

・お店を持つ10年くらい前からイメージがあった。イメージをキープすることがすごく大切。自分がやりたいこと・核をクリアにして、具体的なイメージを描くことは、お店を持つことができた今だからこそ、とても大切だと実感している。

・移住者である、女性のオーナーである等、マイノリティだから助成を受けられたことがあったので、移住者であることの苦労はないかな(覚えてないだけかもしれないけれど)。

Q チームづくりについて

・パートタイム7人くらいで、マーケット出店と店舗を運営している。

・AEDANを立ち上げた当初は、友人にボランティアで手伝ってもらっていた。いつかはお仕事として、ちゃんとお金を払ってお願いできるようになったらいいな……と思っていた。その頃から一緒にやっている友人に、今もメンバーとして関わってもらっている。昔から時間を共有している人たちなので、自分が伝えたい味・やり方・お店の雰囲気等、自分の思いが通じる人たちが仲間でいることが、AEDANの財産。

・長く時間を過ごそうと思う人は、どこかで波長が合う人なのでは。全く合わない人とは続かないので、縁があってつながっていく人は通じ合えるものがある気がする。かといって、自分のこだわりから少しずれている時があれば、言葉ですり合わせていく。

Q 女性移住者フードビジネス支援組織「ラ・コッシーナ」について

ラ・コッシーナ

・ラ・コッシーナは、シェアリングキッチンから自分の場所を持つようになるまでをサポートすることを目標としている。卒業してからもスタッフとのミーティングは月1回続いていて、相談に乗ってもらっている。

・卒業までの期限はない。私はビジネスとして何もやったことがない状態でラ・コッシーナに入ったので、2012年から、10年以上。時間がかかった方。

・シェアリングキッチンは、2/3の金額で使用できる。使用時間が増えるほど、利用料が安くなる仕組み。

・お店を持つ為のお金は、ラ・コッシーナにビジネスローン先を紹介してもらい、自分でビジネスプランを作成してお金を借りた。

Q エリアマーケティングについて

・場所は2年くらい前から探していて、いくつも見たけれど、直感でこの場所に決めた。「こんな場所が欲しい」と思い描いていたイメージとマッチして、「絶対ここ! ここじゃないとダメ!」と思った。イメージを具体的に持つことは大事だと思った。

・場所を決めた時は、売り上げがいくらあって……など、ほとんど考えてなかった。幸いなことに、ファーマーズマーケットの出店を通してレストランとの繋がりもあり、味噌を出荷している。お弁当を売っていくしかないという状況でもなかったので、なんとかなったのでは。

・「お店を維持するためには、お弁当を何個売って……」等を計算して自分の気を落とすことは避けた方がいいと思い、あんまり考えないようにしている。やっぱり、人に「美味しい」と思ってもらえることが大事なのでは。お金をもらってお弁当を渡しているけれど、“お弁当”というよりも、“自分のエネルギー”を込めて、“エネルギー”をお金としていただいて、それを交換して回している感じがして。それがないと、お味噌も場所も成り立っていかないのでは。演劇も、空間を通じてエネルギーを人に伝えている。舞台も食も同じ。

3:店内見学

飲食メニューはテイクアウトのみ。弁当、丼、味噌汁、甘酒。全てのメニューに味噌や麹が生かされている。
販売スペースの奥にあるパントリーとキッチン。
麹から生まれる多彩な食文化を解説。
冷蔵庫には麹と販売用の味噌が
数年寝かせた熟成味噌をディスプレイ。

4:報告者の感想

・演劇と聞いて、勝手に、バリバリ! 強そうな方と思っていたけれど、違って、とても謙虚で、やわらかく、あたたかい人だった。けど、心の中は「芯」がある、かっこいい女性だった。

・「麹」がとてもお好きなんだなぁと思った。「麹のすばらしさを伝えたい!」そこに原動力があるんだなと感じた。

 ・ビジネスは、エネルギーの循環。人に「美味しい」と思ってもらえるように。AEDANというお店を通して「エネルギー」を回している。演劇も空間を通してエネルギーをお客さんに伝えていた。そのエネルギーに人は惹かれて、お客さんが続き、ビジネスになるんだと思った。

・具体的にイメージすること、そしてイメージをキープすること。この研修で訪問した場所場所で自分がいいなと思ったエッセンスを組み合わせて、自分の「やりたいこと」のイメージを描きたいと思った。

5:みんなの感想から

・小さな積み重ねで生まれる人との関係性やコミュニティづくりがとても上手なんだなと感じました。自分のやりたいこと、自分の大事にしていることを曲げない強さ、ブランディングしていくプロセスが参考になりました。

・丁寧に手作りされた料理の味がとても美味しかったです。一家族に一樽。みんなに作り方をシェアしていく。何を食べるか、食べたもので体ができている。

・起業するって想像するのがどうしても難しいところがあったけれど、まず思いを少しずつ形にしていくプロセスの中にあるもので、私自身も可能性は十分にあるのだな、と勇気づけられた。

・摩利子さんからは、ビジネスなんて知らなくても商売はできると教えてもらった気がする。根底にあるのはあくまで家族や友人に健康的な食を届けたいというとてもシンプルな想い。

・これまでも現在も周りの友人が手伝ってくれるというのが一番大きいように感じた。自身の想いを明確にして着実に実践することと、外部からの資本を入れて事業を拡大させることは必ずしも同じ次元の話ではないかもしれないが、前者なくして後者はできないと感じた。

・自分が大切にしている事を共有していて、言葉が通じる友人と運営しているのが強みと話されたことが印象的で、良いことも悪いこともお互い自分の思った事を正直に伝え合える関係性は大事だなと感じました。

・自分がどんな場を作りたいのか、ビジョンを描き続けることの大切さを学ぶことができました。イメージが描けていると、思いを共有できる仲間や協力者があらわれ、感覚的なことでさえも伝わっていると感じることができるとおっしゃっていたのが印象的です。 ・ご縁がある人や場所で長く続けていく、やりたいことや大切にしたいことは譲らない、など自分の思いを強く信じることがイメージを実現させるための鍵なのだとわかりました。

・食事も心身に沁みわたり、摩利子さんから感じられるすべてに共感します。摩利子さんの自分の魅力の表現力の高さに圧倒されました。

・10年間起業支援を受けることができたと聞いてびっくりしました! 有色人種の女性のしかも食に関する起業ということで、かなり的を絞った支援があることが新鮮でした。利用者の中には肩たたき(?)にあう方もいるということで、ビジネスのプロが可能性を信じられるものには、時間関係なく徹底的に支援する姿勢に感動しました。

・アメリカで起業している日本人女性の友人はみなさん気負っていない感じが素敵だと思っていて。摩利子さんもまさにそうでした。