Natura 〜Institute for Ecology and Medicine
[訪問記06]ナチュラ エコロジーと医薬の研究所

バランスを取るのが難しくなっている今、自然によって癒やされること、自然を癒やすことをひとつに

バークレーから車で北に約2時間。海沿いのボリナスという地域にある広大な場所。リジェネラティブ・デザインの手法で自然を回復させてきた森、美しい庭、いくつかのロッジ、集会所などで成り立っている。内科医のアナが、健康と全体性を回復させる生活システムに人々を再び結びつけることを願い、NPOの仲間とともに作ってきた。15の歳からアクティビスト、というランドスケープデザイナーのジェームズ・スタークさんに案内してもらった。

報告者:佐藤宏美

概要

日時 :2022/6/23.Thu. 10:30-13:30

場所 :Natura, Bolinas, CA94924

Natura

内容

1:Naturaの散策とヨガ

2:ジェームズの話

3:店内見学

4:報告者の感想

5:みんなの感想から

1:Naturaの散策とヨガ

Google マップが指し示したのは、海岸沿いの何もなさそうな場所。約束の時間になってもスタッフの方が現れず、鍵のかかっていない大きな門の中に入った。木が茂り、草が自然のままに伸びていながら、人の歩く道はきちんと示されており、その道を辿っていくと、小さな家々や、広場や、さらに山の奥へと繋がっている。

案内してくれる予定の方が現れるまで、各自散策した。大きなブラシの木が3本ほど並んで立つ場所で、たくさんの羽音が聞こえ、蜂の巣があるのかな? と思って探していたら……たくさんのハチドリ! ホバリングしながら長いくちばしで花の蜜を吸うハチドリがたくさんブラシの木に群がっている! もう、しばらくはこの木から離れることが出来なかった。

みんなも思い思いに散策しながら、写真を撮るなどしていた。その後、輪になって、ヨガ講師の幸恵さんのリードで青空ヨガをしながら到着を待つ。

2:ジェームズの話

現れたのは77歳のアクティビストのジェームズ。Naturaには18年前に来た。

「Naturaは42年前に始まった。元々この場所は先住民の土地。白人が奪い、牛の放牧などによりはげ山と化した山に、内科医でもあるアナが、元の自然の形に戻そうと様々な木や植物を植え始めた。中にはこの地に適さずに枯れてしまったものもあったが、42年でこのような自然豊かな場所が出来ると言うことは希望でもある。アナは内科医をしながら、自然によって癒やされること、自然を癒やすことを合わせて考えていた。それは長年通い続けている禅寺での瞑想の影響もある。瞑想を通して、心が落ち着いた時に初めて自分の内面が見え、そして初めて自然と繋がることができる。癒やしとは考えることではなく、内面を見つめ心を研ぎ澄まして、頭ではなく心と体で自然と一体化することではないか。

満月の日にはファイヤーサークルで火をたいて火の周りに集う。この営みを人は何千年も前から行ってきた。火は心を解放する薬」

「42年前、木を植える必要があったのは、雨が必要だったから。木が雨を降らせるのに重要な役割を担っている。木が自然界にとってとっても重要である。その木を育むのは土。土の中のバクテリアが自然を豊かにしている。土の中は体内と同じ。様々な自然環境の問題や、体調の不良が起こるのは人間が自然と乖離してしまったから。」

「42年の間に、木が徐々に大きくなり、木陰ができるようになった。木陰ができたおかげでそれまで実らなかった木の実が実るようになった。カケスも巣を作り、雛が誕生している。

鳥は私たちに季節を教えてくれる。木々を愛でているとき、愛おしいと感じるとき、ストレスが取り払われる。この敷地の中には外にシャワーがあったり、開放的なサウナがある。コロナ禍、医療の最先端で働いている方々のリトリートの場としても利用されている。

自然の中にいる時、自分の気持ちがとても平和であることに気づく事が最も重要である。

今の社会では自然の世界とバランスを取るのが非常に難しくなっている。どうしたら大人が地球の素晴らしさに気づく事ができるのだろうか。今、人間が直面している危機の原因は想像力の欠如ではないか。どんな世界に住みたいのかをイメージすることが大切。自分の夢にワクワクすることが大切。自然界の生き物を観察していて思うこと、例えば蝶になる青虫。青虫から蛹になり、蝶になるが、今の人間は蛹の状態ではないか。様々な問題があり、瀕死の状態の蛹だからこそ、新しい何かが生まれるのではないか」

「アクティビストとして最初に出来る事は、自分自身をどのように癒やすかを考えること。自分自身を大切にできずにどうして地球を大切にできるだろう。
アクティビストとして大切なのは、対象を好きでいること。情熱を持って取り組むこと。
自分は何をするのか。そして何をしないのかをはっきりさせること。
大きな事をしなくてもいい。小さな事を大きな心で行えばよい」

3:自然と一体化するワーク

この場所を深く感じるために、広大な敷地の中に各自が自分の好きな木を見つけ、ひとり無言でその木と過ごす時間をとった。

最後に山の中腹に上り、蜂の巣を見せてもらった。木の幹を活用した蜂の巣が木の上に縛り付けられているのを見上げながら、自然と一体化するワークをした。目をつむり、両手を広げて、鳥の声、虫の音、風や土の軟らかさを感じ、自分の五感を研ぎ澄ましてゆく。そして、ゆっくりと山を下りながら、足の下から感じられる木の根や土の弾力などにも注意を払ってNaturaを後にした。

4:報告者の感想

『福島にも創れる!』と思った。鳥や虫や植物の種類は福島と同じものもあれば違うものもあるけれど、元々の自然環境に戻していくような、植物も動物も虫も人も居心地の良い場所。エディブルスクールヤードとNaturaを合わせたような場所を創りたいと思う。あんなにたくさんのハチドリに出会えたことは本当に大きな喜び!

ジェームズが到着して、お話をうかがっている間、通訳を担当したのは京香ちゃんだったが、ジェームズとのやりとりが何とも微笑ましかった。後から聞いた話だけれど、京香ちゃんはこの時、ジェームズがどんな人なのかに集中して話を聞いていたという。それまで、うまく訳さなければと意識していたが、このNaturaではジェームズという人に興味を持って話を聞いているうちに、自然と通訳することができたという。聞いている私たちもその自然さを自然に受け取っていた。これもNaturaという場所が持っている力だったのだろうか。京香ちゃんの「自然」への覚醒のお話もなんだかじんときました。

5:みんなの感想から

・自然環境と人の共存の可能性を模索するための場所ということで、見てみるまでなんのことか分からなかったのですが、体験して一番考え方が変化した場所です。自然と自分が一体であることを体感する施設でした。体感しないと分からないというのが、正直な感想です。

・自然とともに生きる、のような言葉の意味がはじめはよくわからなかったが、あらゆる生き物にとっての自然の状態が存在することが正常な状態を保つと感じた。それは植物だったり虫だったり動物だったり。ある側面からの快適さを求めるとどこかでその対価が払われ、結果的に持続的とは言えない状況を作り出すということを体感した。

・自分の感覚をもっと研ぎ澄ませて、自然とつながっていきたいと思いました。Naturaで過ごすなかで、風の音やにおいを感じながら人は自然と共に生きているのだ、と実感することができました。鳥のさえずりは何かを伝えるニュース! 毎朝何か新しいことができないかと考えている! など、子どものようにお話してくださった姿が印象的です。

・どんな世界をつくりたいかをイメージすることについて考えさせられる場でした。わたしの観ている世界をフルスクリーンに視野を広げて生きることへと気づかされました。

・可能性にワクワクすることが大事。ダメ出しでなく、どんな世界を作りたいのかと考える事が大事だという話がとても印象的でした。WhyでなくHowに意識をもつ事だなと感じました。

・知っている場所に戻ってきたような安心を感じた。その風景とは、20歳手前の何物でもない、挫折感しか感じていない、笑うこともできない苦しい時期に父に連れて行ってもらった山の風景。日本から遠く離れた場所でも懐かしく感じる場所があることを嬉しく思った。

・木のうえに設置した大きな巣箱の前で、物事を見る視点、全身を使って感じる大切さについて聞いたことが印象に残っている。ゆるやかな癒しが人には絶対に必要で、それはちゃんと声に出して言い続けたい。周りに伝わるように。

・話の中で人身売買をされる少女が同じバスに乗ったことがあり、そのバスを降りてこのようなことが起こらないよう活動にさらに熱が入ったという部分があったが、今行なっているひとり親調査と近いものを感じた。どんなに悲惨な現状が調査で浮かび上がったとしても、私たちが直接支援を行なっているわけではない。ただ、その課題を知ってしまった人として、そのハイリスク層を含む脆弱層が困らないシステムを作りたいと思った。しかし、それは彼らのみをターゲットとしたサービスではなく、あくまでより広い層をターゲットとして事業として継続しつつ、一部の困窮層にも届くのが理想であるように感じた。

・自然のなかにいることで平和や癒しが訪れるのだと確信を持ち、自然からのエネルギーを行動力にして楽しみながらこの場をつくられたのだとわかりました。またアジアの人身売買に関するお話から「何をするのか、しないのか」という選択をすることの重要性、目の前のことにアクションが起こせなくとも世界を変える方法はあるのだという確信を持たせていただきました。

・70歳代の時代の人、戦争反対、原発反対、日本の学生運動の時代のおじさん達とそんなに変わらない世代だなと重ねて見ていた。当時いろんな運動が起きて、いろんな事件が起きて、そうして今のジェームズがいる。地球と自分との繋がりについての言及をもっともっと深掘りして聞いていたかった。