Edible Schoolyard (ESY)
[訪問記01]エディブル・スクールヤード

ガーデンの入り口で、みんなで記念撮影

美しい菜園とキッチンが生むワクワク。主体的な命の学びは、子ども自身が『大事にされている』と感じる場所から始まる

私たちは、自分が食べるものでできている。オーガニックの母とも呼ばれる、バークレーのレストラン『シェ・パニース』オーナーシェフのアリス・ウォータースが、地元のマーティン・ルーサー・キングJr.中学校の荒廃をなんとかしたいと当時の校長とともに始めた学校菜園エディブル・スクールヤード(ESY)。25年におよぶ実績の中で、地元のコミュニティを巻き込んだ2エーカーの菜園を実現し、〈教科教育+食育+人間形成〉の3つを含んだ「エディブル・エデュケーション」を作り上げてきた。エディブル・エデュケーションはバークレー市内の全ての中学校に導入されるにとどまらず、アメリカ各地、世界へと広がっている。そこにあるのは、命と民主主義の担い手となる子どもたちを育む視点。

ESY始まりの地を訪ね、現場の責任者であるラッセルさんにお話を伺いながら、子どもたちが学ぶガーデンとともに、見学者が普段は入れないキッチンの中も案内してもらった。

報告者:黍原里枝(グラフィックレコーディング制作)

*この見学訪問は、エディブル・スクールヤード・ジャパン(ESYJ)のご尽力で実現することができました。改めて御礼申し上げます。

概要

日時 :2022/6/20.Tue. 13:30-15:00

場所 :ESY at Martin Luther King Jr. Middle School, 1781 Rose Street, Berkeley

エディブル・スクールヤード

内容

1:グラフィックレコーディング

2:報告者の感想

3:みんなの感想から

4:写真ギャラリー

1:グラフィックレコーディング

2:報告者の感想

子ども達の主体性とそこにつながるために、サイン、看板、デザインなどとても大事にしているのを感じました。子ども達が学校にいる期間だけでなく、もっと長い人生をいかにより良く送れるかを大事にしているのを感じました。

3:みんなの感想から

・組織としても学校からは独立してESYで資金を調達しているのが印象的だった。地域の公教育の一部であっても、それだけ資金を調達できる、なおかつ資金が存在している、ファンドレイジングがとても身近に感じられた。行政が行えないのであれば民間で資金を調達して実現する。ESYだけではないが、バークレー研修では米国にあって日本にはない積極的な市民の姿勢を感じずにはいられなかった。

・保護者、先生、地域の方など、色んな人の理解・協力を得るまでに、10年かかったこと。たくさんのミーティングを設け、ビジョンやプランを説明して理解を得ていった。10年かかったんだ……と驚いた。

・25年以上の年月をかけて培ってきたコミュニティや保護者、学校、農家そして行政との連携の上で、ベースとなるもの(ビジョン・プレゼン・目的)をしっかり積み上げて実践していることを、現場を見て、より実感しました。

・エディブルスクールヤードの思想やビジョンを周りに浸透させていくために多くの時間を使ったというお話が印象的でした。大人が教えるのではなく、子どもたちが視覚や味覚、感触から学んでいく環境を整えることに徹底している信念が感じとれました。すぐには変わらなくても、時間をかけて変化していくものだと、植物の成長と同じように長期的な視点をもって活動されているのだとわかりました。

・ガーデン、キッチン共に、美しく、子どもが自然とワクワクさせられるようなデザイン。

・リアルなツールを用意してあり、子どもが本物に触れながら、自分で自分に合う道具を選べるようになっていたことに驚いた。子どもも一人の人として扱われる感覚や、ワクワクがここにも生まれるなと思った。

・目で見て何をすれば良いか分かりやすく、とてもインクルーシブな場で、子どもたちが安心できるんだろうなと思いました。何より子どもたちが「ワクワクする」という事を考えて作られた庭が印象的でした。余白を残すというか、あれもこれも伝えたいという伝える側の想い優先ではなく、子どもたち目線の設計が印象的でした。

・この場所の根底にある、モンテッソーリ教育に関心が湧いた。

・ガーデンの中にサークルが2つあった。円になり、一人一人の顔が見える形で、授業を始めるスタイルもすてきだと思った。日本の学校でも「円」スタイルを取り入れて欲しいと思ったし、自分が行うワークショップでも大事にしたい。

・学ぶ環境を整えることで、能動的な参加につなげる、学びが深める。

・教室という空間を抜け出し、校庭のガーデンやキッチンで教師と生徒の対等な関係をひらく。

・エディブルスクールヤードでの主体性のある学びを通して子どもたちの可能性を引き出し、命の学びを現場から行えることが大切だとより実感しています。子どもと大人が年齢に関係なく、ともに学びあう関係性が重要であることにも大人たちが気づいていくときかもしれないと思います。

・ESYが公教育の一環として、学校の敷地内でさまざまな教科とリンクさせて庭を運営しているのが面白かった。日本でも地域の農家さんと協力するなどして食育の文脈で育てたり収穫したりは授業の一環として行われているものの、子どもたちの五感を刺激して知的好奇心を育む仕組みが素敵なガーデンを中心に展開されていて、アメリカとは思えなかった。むしろ、足を踏み入れるとヨーロッパの雰囲気に感じた。

・エディブルスクールヤードは「何のために学んでいるか」子どもたちにとっても明確な取り組みだと実感できました。私たちが暮らす地球や自分自身の体、体を生み出す水や食べ物など、身近な題材が大きなテーマとなって子どもたちが学びを深めている姿が想像できました。私自身も子どもに関わる一人として「Feel Welcome」に、子どもの感覚を学びの中心に置くことを第一に考えていきたいと感じました。

・この日の午前中のワークでの問いかけ、「民主主義ってなんだろう?」が頭に残り、その答えの一つを畑やキッチンで教えてもらった。色とりどりの看板、片付け手順や接ぎ木の手順を示した張り紙はすべて子どもたちの手によるものと分かる。

・民主主義ってなんだろうの答えの一つは、「キッチンに用意されている道具はすべてプロ仕様のもの」ということである。子どもなのにそんな良いものなんて必要ない、という声もあるだろうが、モノを通して存在の肯定を示すやり方があるだろうと感じた。切れの悪い、数を揃えるためだけの100円ショップの包丁でなく、プロ仕様のものが自分たちのために用意される。使っていいと大人が言ってくれている。自分たちの存在を一人の大人同様に認めてくれる環境では、自分の声を伝えることが当たり前で、子どもたちの内側には自然と自分を尊重する感覚が育まれていくに違いない。

・一番行きたかった視察先でした。環境や地域や家庭の問題で生き辛さ、学び辛さを感じている子ども達に、食を通して生きる・学ぶを感じさせる事にとても共感しています。モンテッソーリ教育「子どもには生来、自立・発達していこうとする力(自己教育力)があり、その力が発揮されるためには発達に見合った環境(物的環境・人的環境)が必要である」という考え方は今、コミュニティースクールの運営などで学校に関わる中で課題をたくさん見ています。

・アーチをくぐり抜けてたどり着く円形の広場は、輪になって当日の作業についての説明を聞いたり、誰が何の作業をするか話し合ったり、お互いの顔を見て話し合える設計に。庭の植物を使って理科の授業を行ったり、数学の学習を取り入れたり、美術の時間に看板を作ったり、畑が畑としてだけでなく通常教室で行われる学習が、自然と結びながら体感として学べる場。そして、木陰にはベンチがあり、放課後や休み時間に休憩することのできる場。決して真似することが難しい場所ではないと感じられ、自分の生活圏の中にも作ることができると思えた。空き地を活用してぜひ作りたい!

・夕方5時以降は誰でも入ることができるという解放感!(コロナ禍、いくつかの門は閉じられていたけれど)見学中近所の方が近道として通過している姿も。モンテッソーリ教育をベースに置いたデザインが素晴らしかったです!

4:写真ギャラリー

ラマダで円になってラッセルさんのお話を聞く
The time is always right to do what is right−正しいことをするのに、時を選ぶ必要などない。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉。
野菜、花、果樹が、パーマカルチャーの手法で楽しくデザインされたガーデンで育っている
サインは子どもたちと作る。農作業は近所のコミュニティの人たちもボランティアに。
中学生という微妙な年頃。中には勉強を好きではない子どももいるが、菜園の動物たちへの興味がきっかけでガーデンの授業を楽しみにするようになるという
木製の温室は育苗室。挿し芽の解説ポスターが入り口に。
チキントラクター。籠の中に鶏を入れて時々移動させることで、鶏は餌を採りながら土には鶏糞を
大きなピザ窯もある。作った野菜を実際食べる楽しみは大きい
キッチンでは、シェフ・ティーチャーが教科担当の先生と協力して授業を行う
クラスで大事にされているモットーがカラフルに掲示されている
無駄にしない。環境、エコロジーへの意識も重要。野菜クズから美味しいスープも作る。
ESY立ち上げ時からのシェフ・ティーチャーであるエスターさん。手作りのレモネードで歓迎してくれた。

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